前回は痛い口内炎についてお話しました。
それに関連して今回は、お口の中に見られる治りにくい腫れ物についてご説明したいと思います。お口の中にできる腫れ物の中で一番多いのは嚢胞と呼ばれる腫れ物です。
嚢胞とは体内にできた正常でない空間のことで、しっかりとした壁のような組織で周りを囲まれ、中には水のようなものや粘液性の液体で満たされています。
- 歯根嚢胞
むし歯が大きく進んで、神経まで達した場合に、神経が感染してしまいます。すると感染した歯根の先から膿が出てくることがあります。はじめのうちは痛くありませんが、感染が進むと排膿が多くなり、歯の先の骨が腫れて、強い痛みになります。
それを治療せずに放置しておくと、歯茎から膿が出て、一時的に痛みがなくなることがあります。しかしそれで治った訳ではないので、その腫れと痛みは再発します。
それを繰り返していると、大きく腫れて、その歯を残せなくなります。
先日、にし歯科医院に初診で来院された40代の男性がありました。その方は、出張で佐賀に来たが、今週には関東に帰るとのことです。腫れて痛くて、どうにも我慢できないとのことで受診されたわけです。見ると歯根嚢胞から顎の骨に炎症が広がって、左側の顎が大きく腫れて、とても痛々しいのです。「お仕事が忙しいのは分かりますが、今は自分の体のことを考えてください。」と説得して、佐賀大学医学部歯科口腔外科に紹介状を書いて、診て頂きました。翌日、ご本人からお電話があって、「その日に入院になりました。とても進んでいると言われました。ありがとうございました。」と御礼の言葉をいただきました。
歯根嚢胞は嚢胞のうちの約40%を占めます。むし歯や歯周病の治療と並んで、よくある歯科の病気ですが、それを放置すると重篤なことにもなりますので、早めの治療が必要です。
- 含歯性嚢胞:上顎の前歯や親知らず辺りの骨の中にあることが多い。歯冠を嚢胞の中に含んでおり、歯冠完成期にできると考えられている。
- 術後性上顎嚢胞:上顎洞根治術(副鼻腔炎の手術)をした後、10年~20年してから上顎洞にできる嚢胞で、感染により膿が溜まって腫脹、痛みがある。
- 粘液嚢胞:舌の下や唇の、唾液の出てくる管が水漏れを起こして、水風船のように溜まってくるもので、切開して除去する事ができる。
粘液嚢胞以外は、初期には全く痛みや違和感がないため、他の歯の治療で、撮影したレントゲンでたまたま見つかるということが多いのです。しかし痛みや腫れが出て気がついたら、ぜひあなたの健康のためです。早めの歯科医院受診をおすすめします。
にし歯科医院 院長 西 信太郎
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